持続可能な水産資源の利用と調達

世界的にエシカル消費意識が向上し、日本国内においても持続可能な水産物の調達・販売を求める機運が高まっています。TOREIは、サステナブルな方法で生産された原料の調達を推進し、過剰漁業やIUU漁業(※)を排除することで、 持続可能な形での調達の実現をめざします。

マグロ類に係る調達ガイドライン

TOREIでは、水産物を扱う企業として、これまでもサステナブルな水産物の調達や、IUU(※)漁業に関わる水産物を取り扱わないなどの取組を実施してきました。特に環境面での資源問題や国際的な過剰漁業、社会面での人権問題等が問題視されることのあるマグロ類については、課題解決に貢献することを目的として、2022年8月にマグロ類に係る調達ガイドラインを定めました。長期的視野に立ったビジネスの継続性と次世代への水産物の安定供給という両側面から、本ガイドラインに則った取組を引き続き推進していきます。

※IUU漁業:違法・無報告・無規制(Illegal, Unreported and Unregulated)に行われている漁業を指します。密漁や乱獲、不正確な報告の漁業などは、海洋環境の悪化や水産資源の減少の大きな原因となっており、近年では人権問題も問題視されています。TOREIではこれまでも、IUU漁業による水産物を取り扱わないよう取り組んできましたが、サプライチェーン調査や調達方針の策定等により、さらなる体制の強化を図っていきます。

マグロ類に係る調達ガイドライン

当社は地球環境に配慮しない企業は存続しえないとの認識に立ち、より良い社会への発展に貢献すると共に、仕入・加工製造・保管・物流・販売及びサービスなど、すべての企業活動において地球環境の保全・向上に積極的、誠実に取り組んでいます。安心安全な水産資源の持続的な利用は、企業活動の根幹であると認識しています。サステナブルな方法で生産・調達された原料の調達を行い、国際的な過剰漁業やIUU(違法、無報告、無規制)漁業、さらに人権侵害の問題などの解決に貢献することを目的とし、以下の通りマグロ類(大西洋・太平洋クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガ、カツオ)に関する調達ガイドラインを定め、当ガイドラインに基づく取り組みを推進して参ります。

A) マグロ類の環境面に於ける調達方針について

当社は、長期的視野に立ったビジネスの継続性と次世代への水産物の安定供給という両側面から、科学的根拠に則り、マグロ類を持続可能な形で調達するべく、以下の取り組みを進めていきます。

<天然マグロ類>

  1. 1. 世界水産物持続可能性イニシアチブ(Global Sustainable Seafood Initiative、以下 「GSSI」)に認定された認証プログラム(以下「GSSI認定認証」)が設定する、天然マグロ類に関する持続可能な漁業の基準を、サプライヤーと協力し水産業界内に浸透させ更に発展させること
  2. 2. GSSI 認定認証の取得を目指す企業およびサプライヤーが、科学的かつ客観的な計画に基づいた漁業改善プロジェクト(Fishery Improvement Project、以下「FIP」)を導入できるよう積極的に協力すること
  3. 3. 国際連合食糧農業機関が定義するIUU漁業によるマグロ類の取り扱いを回避するために、GDST(Global Dialogue on Seafood Traceability)の推奨する主要データ要素を備え、透明性あるトレーサビリティの確保を目指すこと
  4. 4. 洋上転載については、国際条約による堅固な監視監督体制の実施を支持すること
  5. 5. 国際条約に基づく延縄船への監視員の乗船を遵守する漁船を後押しすると共に、電子モニタリング等を通じた乗船率の向上と乗船管理体制の強化を支持すること
  6. 6. マグロ類の地域漁業管理機関や関係省庁に対して、当調達ガイドラインを達成するために必要な協力を行うこと
  7. 7. NGOなどのステークホルダーと持続可能な天然マグロ類の調達実現の為の意見交換の機会を設けること

<養殖マグロ類>

  1. 1. GSSI 認定認証により、養殖マグロ類に関する基準が策定されることを支持し、そのために積極的に協力すること
  2. 2. GSSI認定認証の取得を目指す養殖サプライヤーが、科学的かつ客観的な計画に基づいて活動ができるよう積極的に協力をすること
  3. 3. 国際連合食糧農業機関が定義するIUU漁業によるマグロ類の取り扱いを回避するために、GDSTの推奨する主要データ要素を備え、透明性あるトレーサビリティの確保を目指すこと
  4. 4. マグロ類の地域漁業管理機関や関係省庁に対して、当調達ガイドラインを達成するために必要な協力を行うこと
  5. 5. NGOなどのステークホルダーと持続可能な養殖マグロ類の調達実現の為の意見交換の機会を設けること
  6. 6. 養殖に利用される餌資源については、GSSI認定認証が取得できるように積極的に協力すること

B) マグロ類の社会面に於ける調達方針について

当社は、人権の尊重は世界でビジネスを展開する上で重要な要素であると考えています。マグロ類のサプライチェーンにおけるIUU漁業および人権侵害の防止に取り組み、責任あるサプライチェーンの実現を目指すべく、サプライヤーを含めた多様なステークホルダーとともに、当社株主である三菱商事(株)の方針に基づいて対応し、課題解決のための手段を講じます。

人権 : 方針・基本的な考え方(三菱商事株式会社コーポレートサイトより)

C) 当ガイドラインに基づいた取り組み

当社は、上記A)B)の調達方針を実効性のある形で実現するために以下の取り組みを行っています。

取り組み 進捗 今後の方針
当社が調達するマグロ類のうち、GSSI認定された認証取得製品の割合を30%とする 2022年ガイドライン目標設定時、GSSI認定認証取得製品の割合は約1%でしたが、MEL認証取得巻網船団からの買付増加により、2024年度は約20%となりました。 2030年までにGSSI認定認証取得製品の割合30%達成を目指し、引続き取組を進める。
FIPを実施するサプライヤーを積極的に協力する FIPを実施しているサプライヤーと、GSSI認定認証の取得に向けて具体的な協議を開始しました。また、FIPを未実施のサプライヤーについても、当社グループが行う環境や人権に関する監査を通じてリスクや課題を認識し、共同で改善策を検討・実施する取り組みを開始しました。 FIP実施中のサプライヤーとは認証取得を目指し、FIP未実施のサプライヤーに関しては、監査を通じてリスクや課題を認識した上で、共同での改善策を実施していく。
GDST規格に準じた主要なデータ要素の収集状況について整理・確認する 2023年に主要データ要素の収集状況について整理・確認は完了しました。
その結果、一部のデータ要素は収集済み、乃至は収集可能であることが確認されたものの、個社の努力では収集が難しいデータ要素があることも判明いたしました。
引き続き、変化する市場ニーズを的確に捉え、求められるトレーサビリティの確保の実現に向けて、サプライヤーとの協議を継続していきます。
当社が調達するマグロ類サプライヤーに対し、自主的なリスク評価を実施する 当社が調達するマグロ類の一次サプライヤー全社、一部の二次サプライヤー(漁船)に対し、環境・社会面の取組みに関するアンケート調査を実施しました。
上記に加え、より詳細な調査として、SRA基準や国内外の関連法令・規則を参考にしながら第三者機関を起用し、独自のリスクアセスメントツールを設計いたしました。当アセスメントツールを用い、第三者機関による監査(外部監査)を2022年度1件、2023年度1件、2024年度3件実施しました。また、2024年度からは、上記ツールを用いて自社でのリスクアセスメント(自社監査)も開始し、30件を実施しました。
これらの調査結果を基に、サプライヤーとの改善計画を策定し、改善に向けた推進を図りました。
サプライヤーに対するアンケート調査、及び外部監査・自社監査を継続し、サプライヤー毎の改善計画をフォローアップすることで、サプライチェーン上の環境・社会面の取り組みを改善・推進する。
当社が調達するマグロ類サプライヤーに対し外部監査を実施することで、サプライチェーン上のリスクや課題を認識し、関連するサプライヤーに監査結果を共有し、改善策を共同で検討・実施する
三菱商事㈱と連携し、関係省庁・サプライヤー・NGOなどのステークホルダーとのダイアログへ参加する 三菱商事が韓国・台湾で主催するワークショップに参加し、サプライヤーに対し、上記のリスク評価や監査を通じて明らかとなった課題を共有しました。
また、マルチステークホルダーが開催したプラットフォームに積極的に参加し、意見交換等を実施しました。
サプライヤーと共同で改善策を検討・実施し、引続き同様のワークショップを開催して業界へ広く共有する事を目指す。また、水産業における労働者の人権問題に関するマルチステークホルダーによるプラットフォームなどに積極的に参加し、人権問題への取組の改善推進を継続する。
三菱商事㈱と連携し、責任あるサプライチェーンの実現のための認証プログラム等の浸透・発展や、国際条約などで定義される「働きがいのある人間らしい仕事」環境が整うよう、サプライヤーと協力して取り組む 三菱商事㈱にて2023年よりグリーバンスメカニズムを設置し、運用を開始しました。当社水産事業での運用に向けて2024年度に於いては、漁船に掲載するポスターを作成し、漁船での掲載に向け、協議を開始致しました。 国際条約などで定義される「働きがいのある人間らしい仕事」環境が整うよう、サプライヤーなどのステークホルダーに対する協力を継続する。

以上
制定:

リスクアセスメント(自社監査)

当社が冷凍マグロを買い付けている漁船の船主と意見交換、および、同社が保有する漁船の船長にインタビューを実施しました。

水産業界の課題には、海洋資源を持続的に利用するための海洋生態系の保全や、労働者の権利尊重などがあります。当社は、この課題に対する取り組みとして、第三者と作成した独自のチェックリストを用いて、船長に、環境面(漁獲量など)や社会性面(労働管理・安全衛生など)の項目を中心にお話を伺いました。外国籍船員の宗教的背景や使用言語が差別やハラスメントに繋がらぬよう人材配置や研修に工夫がなされていること、衛生設備や飲み物へのアクセスが容易であること、海洋資源を保全する為の漁法指導がなされていることなどの取り組みを伺うことができ、かつ、船内を視察することで実際の取り組み運用状況を照らし合わせて確認することができました。

船内設備のチェック
マグロ類の転載に関する声明

当社グループ会社である株式会社エム・アール・エス(以下、MRS)は世界各地の漁場をめぐり、漁船からマグロ類を転載し海上輸送を行う超低温マグロ運搬船事業を行っております。マグロ漁業は世界的に重要な漁業の一つであり、漁船によって漁獲されたマグロ類を適切に輸送するMRSの事業はサプライチェーン上、重要な役割を果たしており、持続可能な方法で漁獲されたマグロ類の取扱を通じて、社会的責任を果たすことが重要と考えています。
マグロ類の転載は、Tunas Regional Fisheries Management Organization(RFMO:マグロ地域漁業管理機関) によって、各地域で規制されています。また、運搬船への転載に於いては過剰漁業・IUU(違法、無報告、無規制)漁業由来の漁獲物の運搬を防止するべく、RFMOが任命するオブザーバーの乗船を義務付けられており、オブザーバーは、各漁船の漁獲許可証や、漁船船籍国政府による転載許可、漁獲物の魚種/数量、当該漁獲物が適切に漁獲されているか等を確認すると共に、そのデータを各RFMOに提出する等、国際ルールに則った運用が行われていることを確認しています。一方で、マグロ類の転載を伴う海上輸送では、過剰漁業・IUU漁業・人権侵害の問題への関与も指摘されています。こうした外部環境を踏まえ、MRSでは国際ルールを遵守した上で、長期的視野に立ったビジネスの継続性と次世代へのマグロ類の安定供給という両側面から、過剰漁獲・IUU漁業・人権侵害由来の漁獲物運搬を行わない取組みを推進して参ります。

認証品の取扱

水産物の「持続可能性を図る物差し」として、一定の基準に準拠していることを証明するのが「認証」です。現在、日本の市場では、まだ認証品が十分には浸透していない状況ですが、大手量販店を中心に認証を取得している商品であることを示す「水産エコラベル」を貼った商品を見かける機会は増えており、今後ニーズが高まることが予想されています。TOREIとしても「認証品調達力」及び「国内サプライチェーン」を拡充していく方針です。

水産エコラベル『MSC認証』『ASC認証』『MEL認証』

TOREIは、2016年にMSC及びASCのCoC(Chain of Custody)認証(※)を、2024年11月にマリン・エコラベル・ジャパン(MEL)のCoCを取得し、認証品の取扱を開始してきました。これらの認証では、水産物を生産する漁業者や養殖業者だけでなく、生産された認証水産物が消費者の皆さまの手に渡るまでのサプライチェーンに関わる企業も認証を取得している必要があります。

※CoC認証:認証の魚介類に認証ラベル・ロゴを付けて消費者向けに最終包装されるまでのサプライチェーンにおいて、認証水産物の所有権を持つすべての事業者が取得しなければならないのがCoC認証です。CoC認証は、加工流通の過程で「認証水産物」と「非認証水産物」が混在しないように適切な管理がなされていることを示すものです。

サプライチェーン上で必要な漁業・養殖・生産段階認証とCoC・流通段階認証
サプライチェーン上で必要な漁業・養殖・生産段階認証とCoC・流通段階認証

※小売店で認証ラベル・ロゴ付き商品として消費者向けに最終包装する場合のサプライチェーン

サプライチェーン調査

お取引先に対し、人権・社会面及び環境面のリスクについて、取組・対応状況の設問を盛り込んだサプライチェーン調査を実施しています。当調査は、親会社である三菱商事株式会社のプラットフォームを活用し、環境・社会性面のリスクが高いと判断される商材を「調査対象商材」として特定しています。
TOREIの取扱商材のうち、調査対象であるマグロ・エビについては、当社を含む三菱商事グループの事業活動が人権・環境に負の影響を与えている、または負の影響を与えることが懸念される事案について、社外のステークホルダーからの相談を受け付けるための窓口(グリーバンスメカニズム)を三菱商事株式会社が設置しております。

持続可能なサプライチェーン調査(三菱商事株式会社コーポレートサイトより) グリーバンスメカニズム(三菱商事株式会社コーポレートサイトより)

関連リンク