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異例の大ヒットとなったTOREI ブランド
『神の海老』開拓ストーリーに迫ります!

  • 職種:調達・海老/課長

    入社:2004年

    『神の海老』のオススメ料理
    カクテルシュリンプ

  • 職種:調達・海老

    入社:2010年

    『神の海老』のオススメ料理
    フワフワエビしんじょ

  • 職種:調達・海老

    入社:2019年

    『神の海老』のオススメ料理
    エビのレモン炒め

※取材内容、所属はインタビュー時点のものとなります。

『神の海老』って、一体どんな
特徴のあるエビなんですか?

TOREIのエビ事業は、実に30年以上の実績があります。仕入れ先を世界中から開拓し、マグロで培った販路を存分に活かすことで、今では国内のエビ取扱量でトップクラスを誇るまでになりました。そんなTOREIだからこそできるエビブランドとして誕生したのが、『神の海老』です。世界のエビの産地を知るTOREIが厳選した、とにかく美味しいエビ、さらに、育成・加工・出荷までの全工程にこだわり抜いた、エビ事業における集大成の1つと言えます。

2016年の発売以来、『神の海老』はロングセラー商品になっていますが、その名を聞いてピンと来ない方もいるかもしれません。というのも、TOREIはB to Bの卸しがメインなので、スーパーの店頭では違う商品名になることがあるのです。そして、他のエビと比べると値段はお高め。なのにリピート率がとても高いんです。その理由が“美味しさ”にあります。旨味の指標といわれるアミノ酸の含有量が、一般的なバナメイエビと比べて約1.5倍と多く、旨味たっぷりだから極上の美味しさになるんです。エビ本来の味が濃く、ほのかな塩味があって、私も初めて食べた時の衝撃は忘れられません。

美味しさを生むポイントは2つあります。1つが塩分濃度。通常、海の塩分濃度は約3.5%ですが、高塩分濃度(約4〜5%)の海水で養殖をしています。濃い塩分濃度でエビを育てると成長が遅くなるため、世界的に見ても高塩分海域で養殖してる産地は多くありません。2つめが急速冷凍。水揚げ後の加工場が近く、うまみが逃げないうちにわずか約5〜10分で急速凍結させることで旨味をグッと凝縮できるのです。

※B to B:Business to Businessの略。企業が企業に対しモノやサービスを提供するビジネスを指す。対義語は企業が一般消費者に直接モノやサービスを提供するB to C(Business to Consumer)

『神の海老』を開拓した経緯とは?

『神の海老』をスタートする前は、ネーミングされたエビはあっても、ブランディングできているエビが少なかったんです。以前、販売営業の部署にいた時も、スーパーのバイヤーから「誰もが“いいね”って思えるエビ商品がないんだよね…」とよく言われて、やっぱり悔しいですよね。その時から、価格、産地、ネーミングよりも、美味しくて有名になるエビのブランドを作りたい、という想いがありました。そして、2016年4月にエビ事業に異動になり、ようやくこの想いをぶつける時が来たなと。

やはり水産業界は、相場が安い時に買って高く売るというトレーディングの世界で生きている会社が多いですから、マーケティングとかブランディングをやっている企業も多くない。顧客も高いか安いかで決める商売でした。そうした商況の中で、彼が言うとおり、他と違う、味が違う、品質が良いと全面に押し出せる商品にシフトしていかないと今後は生き残れないでしょう。だから、この話があった時は「いいじゃない、面白そうだね」って。

事前に調査をして、ポテンシャルのあるエビの産地に目星をつけていました。そして、仕入れのための海外出張の道中で、実際に産地を開拓して回ったのです。そして、インドのとある生産地で、最初に『神の海老』の原型を食べた時、「めちゃくちゃ美味い!これだ!」と直感しました。とはいえ、品質が高いだけに、買値も高い。当時は安く売れないものは敬遠されていましたから、日本にはまったく出回っていない。それも面白いなと。早速、食べてもらいましたよね?

いやぁ、美味かったね。社内のベテランプレイヤーの方々も「このエビだったらいける」ってお墨付きをもらってね。もちろん一般消費者の方にもモニターして、みんなに美味しいって言ってもらえた。美味しさって価格以上の強みになりますから、やれる可能性はゼロじゃない。ならば、TOREIがやらずに、誰がやるんだと。

そうして背中を押されて、2016年10月に初めて少量買って、まずは某スーパーでテスト販売をしてもらって、「美味しい!」という声と一定の売上実績を持って実証することができました。そして、2年目からは本格的に買い付けようということになり、当時の上司と現地の産地や加工場を見て、かなりの数量を買ったんです。その後、「神レベルのうまさ」という声から『神の海老』という名前も決定しました。

インドでの“買い”は1日で終わりますが、その後の“売り”の準備が本当に大変でした。まず、全国へ広める役割を担う支社・支店向けにイチから提案方法を考え、エビデンスのためにアミノ酸のデータ比較をしたり、まったく知らない消費者に伝わるようなPOPやパンフレットも作ったり…。売り切るまでのスピードが大切ですから、まさに走りながら考えて実行するのが一番大変で苦しかった。でもなんか楽しいんですよ。0から1をつくり、1から10までやらせてもらって。

なにより、『神の海老』の成功は、開拓プロセスよりも、それ以降のプロセスに携わる多くの人の汗と想いの結果だと私は感じています。国内のスーパーマーケットチェーン企業は国内に約300 社※。TOREIは全国に8支店・支社があって、その300社との販売ネットワークがあり、物流が整っています。顧客や消費者に一番近いからこそ、販売戦略の会議は毎日白熱しましたし、その準備も本当に大変でしたね。実際に販売してみてどう感じた?

何より価格は従来品の1.3倍。「そんな高い商品、本当に売れるの?」と言われた時に、「考えてみてください。100万円の軽自動車と1,500万の高級車って15倍違うんです。品質に大きな差がありながら、たった1.3倍で済むんですよ」と。要するに、味の差がある割には価格差が小さい面をアピールするといった成功体験を共有したり、実際にスーパーの店頭に立って、「うまい!」って驚きの反応が嬉しくて(笑)、そうした声を営業トークに盛り込んだり。やはり安いだけではない、本当に美味しいものを売ることが、販売営業のモチベーションになって、異例の大ヒットに結びついたのだと思います。

私が一番辛かったのが、順調に数字が伸びてきた2019年の時。インドで数量が捕れない時期があったのです。コロナ禍で自炊が増えて、少し贅沢な食材が売れはじめていたこともあり、国内では待っているお客さまがたくさんいた中で、急に「出せません」と断らなくてはいけなかったのが一番つらかった。部署をあげて毎日対応に追われ、私もコロナ禍で海外に行けない中、必死になって世界中を探し、エクアドルの生産者を開拓したことを思い出します。

やはり自然を相手にしていますから、天候、病気など水産ビジネスにはリスクがあります。その中で安定供給するためにこのタイミングで2産地体制を敷くことができたのも、よりメジャーになるための大きな転機だったと思います。

※日本ソフト販売 調べ(2022年1月時点)

今後の展開を教えてください。

高い安いではなく、本当に美味しいエビを食べてほしい。その想いから始まったブランド化は、国内のエビプレイヤーの中でも独自の強さを印象付けることができ、エビの価値を高める一歩にもなったと思っています。現在、国内での『神の海老』の認知度は高まってきましたから、このブランド価値をしっかりと上げていきたい。そしていずれは、海外でエビのTOREI ブランドを打ち出していきたい。そのためにも海外の企業とタッグを組み、世界へと販路を広げ、より安定供給できる体制を構築したいという野望があります。

ブランド価値でいえば、ASCの認証品を取り扱うことができるCoC認証をTOREIは取得しています。ASC認証とは、自然に優しい環境の中で養殖され、そこで働く人や地域住民への配慮にまで気を配った水産物に与えられる国際認証制度です。TOREIはこうした認証品の調達を進めていて、『神の海老』にも一部適用されています。持続可能なエビ事業のためにも、今後はこのサステナブルな価値を世の中に広めていく拡販が、目下の目標です。そして、来週はインドネシアのパッカー(生産加工者)のもとへ行くので、先輩のバトンを受け継ぎ、新しいエビブランドの開拓にも挑戦していきます。

やはり、この挑戦できる風土がTOREIで働く一番のやりがいではないでしょうか。TOREIは創業50年、エビ事業でいえば30年以上の間に培ってきた調達力、目利き力、販売力があります。『神の海老』は、これらの強みを活かし、若い世代の感性で成功した挑戦の1つです。この先、私は次世代の人たちが挑戦できるような環境をつくっていきます。もちろん、“美味しさ”の挑戦の裏には、様々な困難、社会的な課題もありますが、若い世代がそうした壁をどう乗り越え、新しいエビ事業を切り拓くのか。本当に楽しみです。

※CoC認証:Chain of Custody認証の略。加工・流通過程の管理認証を指す

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